LP改修で訴求軸をどう整理するかー機能は同じでも全部違う、を掘り下げる方法ー
このような方に向けて書いています
次のいずれかに心当たりがあれば、この記事はお役に立てるかもしれません。
LPの訴求が競合と似ていて、差別化できていないと感じている
何を訴求の軸にすべきか、根拠を持って決められない
生成AIで訴求案を出してみても、どこかで見たような一般論になってしまう
こうした行き詰まりは、訴求軸を機能の比較として捉えているために起きるケースが多いと感じています。同じ機能を持つ製品でも、置かれた市場も、顧客のニーズも、それを証明する実績も、実際には一つ一つ違う。その違いをどう掘り下げるかが、この記事のテーマです。
本記事のポイント
自社の事業が置かれている市場をマクロで理解することから始める
マクロでの理解に際しては制度の変化・テクノロジーの進化・人口動態の変化・価値観の変化を軸に整理すると市場の解像度が上がる
マクロに加えて、顧客のニーズ(目的・課題)とニーズへの自社製品・サービスの提供価値の接点をミクロで理解する
ニーズと提供価値の接点は自社の製品・サービスを人・モノ・情報で整理するとまとまりやすい
提供価値は一次情報から探ることが有効で、探るための問いが訴求軸の精度を左右する
以下、マクロからミクロへと降りていく順で整理していきます。
訴求軸の前提となる、マクロでの市場理解
なぜ機能比較だけでは訴求軸が決まらないのか
訴求軸を考えるとき、多くの場合、まず競合との機能比較から入りがちです。あの機能はあるか、この機能で勝っているか。しかし、機能の比較だけを続けていくと、訴求の方向性が機能の優劣の話に収束してしまいがちです。そして機能が近い競合ほど、この比較では差がつきにくいケースが多く、「差別化が難しい」と感じたことがある方も多いのではないでしょうか。
私自身、実務で訴求軸を整理する際、いきなりミクロ視点での機能比較から入ると迷子になることが多いと感じています。そのため、まずは一歩引いて、自社の事業が置かれている市場をマクロで捉えることから始めます。同じ機能を持つ製品でも、市場のどの流れの中に置かれているかによって、訴求の意味が変わってくるからです。
市場をマクロで捉える4つの軸
市場をマクロで理解する際、私は次の4つの軸で整理すると、解像度が上がると感じています。
1.制度の変化
法規制、業界ルール、補助金や税制など、事業環境を規定する制度がどう動いているか。制度の変化は、需要が生まれる場所や、参入のハードルを大きく左右します。
2.テクノロジーの進化
自社の製品・サービスに関わる技術が、どう進化しているか。特に近年は生成AIをはじめとする技術の進化が速く、顧客の期待値や、同業他社も含めて実現できることの水準そのものが変わっています。
3.人口動態の変化
ターゲットとなる市場の人口構成が、どう推移しているか。少子高齢化、都市への集中、世帯構成の変化など、人口動態は中長期の需要の総量を規定します。
4.価値観の変化
人々が何を重視し、何を良しとするかが、どう移り変わっているか。サステナビリティへの関心、働き方の多様化、所有から利用へのシフトなど、価値観の変化は訴求の響き方を変えます。
この4つの軸で市場を俯瞰すると、自社の製品・サービスが、どの流れに乗っているのか、あるいはどの流れに逆らっているのかの解像度を高めることができます。この大きな流れの把握が、後のミクロな訴求整理の土台になります。
他社の訴求を読み解く
マクロで市場の流れを捉えたら、次はミクロに降りていきます。ミクロでのアプローチは、まず他社が市場に対してどうアプローチしているかを読み解くことから始めるのが有効だと感じています。他社を知ることで、自社との違いのあたりがつけやすくなるからです。
デスクサーチと生成AIが有効な領域
他社の訴求を読み解く作業は、公開情報の収集、いわゆるデスクサーチが中心になります。競合のLP、サービスサイト、広告、プレスリリース。これらは公開されているため、比較的集めやすい情報です。
近年は、この領域で生成AIの活用が有効で、複数の競合サイトの訴求を要約させたり、共通点と相違点を整理させたりする作業は、AIが得意とするところです。デスクサーチの初動を、大きく効率化できます。
他社の訴求を人・モノ・情報で整理する
情報を集める際の方法として、抽象的なプロンプトで競合リサーチをAIに依頼するだけでは、出力結果を見ても示唆が得にくくなりがちです。この点については経験上、人・モノ・情報という3つの軸で他社の訴求を整理すると、自社との対比の示唆を得やすいと感じています。
人は、その企業がどんな人・組織・体制で価値を提供しているか。専門性、実績を持つ担当者、サポート体制など。モノは、製品・サービスそのものの機能・スペック・品質。情報は、その企業が持つデータ、ノウハウ、実績などの情報資産です。
他社の訴求をこの3軸で棚卸しすると、各社がどこに力点を置いているかが見えてきます。そして、どの軸が優先順位として低そうか、自社が差別化できる余地がどこにあるかの見当がついてきます。
生成AIの出力に潜む留意点
ここで一つ、留意しておきたい点があります。デスクサーチや生成AIによる分析は強力ですが、その出力の性質を理解しておく必要があります。
生成AIが出力するのは、多くの場合、供給側が発信した情報をサマライズしたものです。つまり、企業がこう見せたいと発信した情報の集約であって、需要側、つまり顧客が本当に何を求めているかという情報ではありません。ここが、生成AIの分析が一般論になりがちな理由だと捉えています。
公開情報は、あくまで供給側が整えた情報です。そこから訴求軸を組み立てると、他社と似たような、供給側の論理に閉じた訴求になりやすい。この限界を超えるには、後述するように、一次情報へと掘り下げていく必要があります。

自社の提供価値と顧客ニーズの接点を整理する
他社を読み解いたら、次は自社に目を向けます。ここでの目的は、自社の提供価値と、顧客のニーズが重なる接点を見つけることです。
自社と他社の違いのあたりをつける
先ほどの他社リサーチを土台に、自社が他社と異なる部分のあたりをつけていきます。他社が力点を置いている軸、手薄にしている軸を把握した上で、自社が本当に強みを持てる部分はどこかを見定めます。
この作業は、いわゆる3C分析(顧客・競合・自社)における、他社の円と重ならず、自社と顧客の円が重なる部分を探す作業にあたります。他社と重なる部分でいくら訴求しても、差別化にはなりません。他社にはなく、かつ顧客が求めている部分にこそ、訴求軸の種があります。

提供価値を機能価値・感情価値で分ける
自社の提供価値を整理する際、私は機能価値と感情価値の2つに分けて捉えると、掘り下げやすいと感じています。
機能価値は、その製品・サービスが機能として何を実現するか。処理速度、コスト削減、業務効率化など、客観的に測れる価値です。感情価値は、顧客がそれを使うことでどう感じるか。安心感、信頼、心地よさ、ステータスなど、主観的で情緒的な価値です。
そして、この2つの比重は、BtoBとBtoCで傾向が異なると感じています。BtoBでは、購買の意思決定に複数の関係者が関わり、稟議や合理的な説明が求められるため、機能価値が前面に出やすい傾向があります。一方で、最終的に発注を後押しするのは、担当者の安心感や、この会社となら任せられるという信頼といった感情価値であるケースも少なくありません。BtoCでは、意思決定者が個人であることが多く、感情価値が購買を直接的に動かす比重が、相対的に高くなりやすいと感じています。
いずれの場合も、機能価値だけ、あるいは感情価値だけで訴求を組み立てるのではなく、両者のバランスを、事業特性に合わせて設計することが大切だと考えています。
提供価値の対岸にある顧客ニーズを言語化する
提供価値を整理したら、その対岸にある顧客のニーズを言語化します。自社の提供価値が、顧客のどんな目的の達成、あるいはどんな課題の解決につながるのか。提供価値を、顧客の言葉に翻訳する作業です。
自社が語りたい価値と、顧客が受け取りたい価値は、必ずしも同じ言葉ではありません。この翻訳がうまくいくと、訴求は自社の自己満足ではなく、顧客に届く言葉になっていきます。
一次情報で訴求軸を掘り下げる
ここまでの整理は、主に公開情報と社内の既存理解に基づくものでした。しかし、先に触れたように、公開情報からは供給側の論理に閉じた訴求しか出てきにくいという構造上の限界があります。訴求軸の精度を一段上げるには、先にまとめた訴求軸の仮説は携えつつ、一次情報へ掘り下げていくことが必要です。そして、その一次情報をどう引き出すか、つまりどんな問いを立てるかが、訴求軸の精度を左右すると考えています。
営業・CSへの問い(顧客接点の一次情報)
まず有効なのが、営業やCSなど、顧客と直接接している担当者へのヒアリングです。彼らは、顧客が実際に何を言い、何に迷い、何を決め手にしているかを知っています。これは公開情報には出てこない、貴重な一次情報です。
ここで立てたい問いの例を挙げます。
顧客が検討フェーズで、どのような質問をしてくることが多いか。
自社の製品を選ぶ、あるいは使い続ける理由は何だと感じているか。
直近1、2か月ほどで、顧客の反応やトレンドに変化はあるか。
その際、先の工程で整理した同業他社の訴求と現状の自社の訴求を担当者へ伝えながらヒアリングを進めると、より議論を深めていくことができます。
実務の現場では、営業・CSの担当者の時間を確保することが難しいケースもあると思います。その中で時間を確保してヒアリングする上では、相手側にも気付きがある時間にできることが良好な関係構築にも繋がるため、マーケター側から見た市場・他社・顧客を伝えることは重要だと考えています。
こうした問いから返ってくる答えには、顧客のリアルなニーズや、決め手になっている価値が含まれているケースが多く、訴求に掲載すべき点やFAQで解消すべき点が多く含まれています。
製品・サービス担当への問い(こだわりの一次情報)
次に有効なのが、製品・サービスを作っている担当者へのヒアリングです。ここで聞きたいのは、製品・サービスに込めたこだわりです。
作り手が、どこにこだわり、何を大切にして作っているか。そのこだわりは、顧客が言語化できていない価値の源泉になっているケースが多く存在します。作り手のこだわりと、顧客が感じている良さがつながったとき、他社には模倣しにくい、独自の訴求軸が見えてくることがあります。
対外的な実績(RTB)で裏づける
一次情報から訴求軸の仮説が見えてきたら、最後に、それを対外的に証明できるかを確認します。言いたいことを言うだけでは顧客に信じてもらうことが難しいため、その訴求を裏づける対外的な実績(RTB:Reason to Believe)を付け加えることで、より説得力を高めることができます。
ここまでで整理した、顧客ニーズと自社製品・サービスの接点について、それを対外的に証明できる材料を洗い出します。導入社数や継続率、成果指標といった定量的なもの。受賞歴、著名企業の導入、顧客の声といった定性的なもの。これらが、訴求を発信者の主張から、客観性を持った信じられる訴求へと変えていきます。
訴求軸とRTBがセットになることで、機能は似ていても、この会社は違うと感じてもらえる訴求になると考えています。
まとめーAIで拾える情報と、一次情報にしかない示唆の使い分け
これまで述べたように、LP改修における訴求軸の整理は、機能の比較から入るのではなく、市場のマクロ理解から始め、ミクロな他社・自社・顧客の接点へと降りていくことで、精度が上がっていくと考えています。
改めて流れを整理します。まず、制度・テクノロジー・人口動態・価値観という4つの軸で市場をマクロに捉える。次に、他社の訴求を人・モノ・情報で読み解き、自社との違いのあたりをつける。そして、自社の提供価値を機能価値・感情価値で整理し、その対岸にある顧客ニーズを言語化する。最後に、営業・CS・製品担当への問いから一次情報を引き出し、訴求軸を掘り下げ、RTBで裏づける。
この一連の流れで意識したいのが、AIで拾える情報と、一次情報にしかない示唆の使い分けです。デスクサーチや生成AIは、公開情報を集め、整理する作業を大きく効率化してくれます。一方で、そこから出てくるのは供給側の論理に閉じた情報になりがちです。訴求軸を、他社と似た一般論で終わらせないための鍵は、オフラインにしかない一次情報、つまり顧客接点を持つ人や、作り手のこだわりの中にあると、現場を重ねるほどに感じています。
答えを出す作業はAIが担えるようになりました。それでも、どんな問いを立てて一次情報を引き出すかは、まだ人の仕事として残っている。その問いの質こそが、訴求軸の精度を分けるのだと考えています。
LPの訴求軸の整理についてお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。
監修者情報
サムライスタイル株式会社 代表取締役 橋本 圭司

サムライスタイル株式会社 代表取締役 橋本 圭司
事業会社・Web系ベンダー双方での経験とBtoC・BtoBで多様な業界30社以上のインハウス支援を経験。マクロでの業界理解に基づく戦略立案からミクロでの施策立案・実行まで伴走し、特に獲得領域におけるリスティング・動画広告運用からLP改善、CRMへの接続までを得意とする。
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